ジョン・ミューア・トレイルを行く―バックパッキング340キロ

ジョン・ミューア・トレイルを行く―バックパッキング340キロ

ジョン・ミューア・トレイルを行く―バックパッキング340キロ


最初は写真の豊富な雑誌特集タイプのものだと思っていた。Amazonから届いた箱を開けると、しっかりとしたハードカバーがそこに。写真はあまり期待できないかなぁとちょっとがっかりしつつも、これはじっくりと楽しめるぞと、にやりとしていまった。予想は的中だが、面白すぎて、平日の2夜で読み切ってしまい、ちょっと残念な気も。

中身はというと、紀行文でありながら、ガイドブックでもあるような不思議な内容ではあった。時折バックパックの楽しさを語り、と思うと大変さ・面倒くささも隠さない。熊や蚊の話には正直げんなりしてしまったが、それでもトライしてみたくなるのは、バックパッキングが本当に好きになりかけているのか、それとも加藤さんの語りが心地よいのか。構成は失敗に終わった初トライの第一部、リベンジの第二部。この第二部の内容が昔、NHKのTVになったよう。正直、失敗しつつも様々な人との交流を楽しんでいた第一部の旅の方が楽しそうにみえたが、まあそれは旅のタイプが違うだけで、どちらも楽しいものなんでしょう。それにしても、バックパッキングをする人種というか、そのコミュニティーというか、そこには非常に惹かれる。昔、小学校の先生に「アメリカという国はむちゃくちゃなところもあるが、教養の高い大学にいるような人間は総じてすばらしい人間が多いんだよ」と聞いたことを思い出しながら、バックパッカーというのも、似たような「人種」なんだろう。孤独ながらも心地いい世界感が伺えた。

ぼくは冒険家ではない。野心家でもない。ただ、人とは少しだけちがったことに、人よりも少しだけ余分に興味と動力あるのだろうと、思っている。


そう、私も違う次元ながら全く同じことを思っていた頃があった。今よりちょっぴり若い頃。懐かしくもあり、心に残った言葉。

バックパックを背負うと、背筋がぴんと張り、気力が漲ってくる。この瞬間が好きだ。こういう感覚があるから、バックパッキングはやめられないのだ。
重いバックパックが背中にフィットし、その一体感が快感になる。一定のリズムで歩くときに、背中から聞こえるバックパックのきしみ。何万回、何十万回と繰り返される呼吸。流れる汗。じりじりと肌を射す太陽。頬をなでる高原の風。蓄積される疲労感。そのことごとくに身体と精神が感応し、充実感が増していく。長い時間と長い距離を、徒歩という原初的な行為で乗り越えてきた喜びがある。

これは冒険でも探検でもない。そんな大げさなものではない。単なるバックパッキングの究極のイベントにすぎないのだ。そもそもバックパッキングに冒険や探検は似合わない。明るく陽気に、楽しくそしてさわやかに、おおらかに歩く。これがバックパッキングの神髄である。


この辺が、山登りではなく、バックパッキングにあこがれるところ。本書にも出てくる他のバックパッカーにも、綺麗な景色があったらとことん寄り道をするというスタイルの方々もおおく、すごく楽しそう。ゴールに向かって頑張る山登りもいいのだが、個人的には道草する中に楽しさを見いだしたい。明るく陽気に、楽しく、さわやかに、おおらかに。なんて気持ちのいい言葉なんでしょう。

ジョン・ミューアトレイル。いつか行ってみたい。