エベレストを越えて


エベレストを越えて (文春文庫 (178‐5))

エベレストを越えて (文春文庫 (178‐5))


今回の本は、失敗や挫折が心に残る、
他とは多少違う印象が残った。


やはり植村直己という人物は、
ソロでの冒険が「似合う」ということか。


海外遠征隊の話はさすがにつらい。
まさに、本当の敵は自分たちの中にいたと。
自身が隊長として望んだ、最終章にある日本部隊の話は
もっとつらい。
責任感が強すぎて、メンバーの事故を抱え込んで
しまっている姿がありありと浮かんだ。
人間を率いるという点で、本当はそれを飲み込むほどの
精神力がないといけないのだろうが、
そこの若干の弱さが、また植村直己氏の魅力でもある。
そういう意味では、本当に冒険家という人種であったんだと思わされた。


日本隊と海外隊の話を読み比べると、
やはり山という過酷な環境では、日本の和というか、
団体力というのが大きなプラスになっている気がした。
海外隊は、もちろん多国籍・他人種という特殊な状況もあったとはいえ、
俺が先に・・という個人成果型。
もちろんそれがうまくいく場合も多く存在するとは思うが、
植村氏も、決して単独では上れない山と言っているエベレストでは、
マイナス要因となってしまうようだ。


日本になぜノーベル賞が少ないのか、
その一方、なぜ国の創出する技術は総体的に高いのか、
それもこのへんに秘密がありそう。


逆にバックパッキングという旅は、やはり欧米的な
自由・個人型の方がしっくりいくのかもしれない。
ある程度の自分勝手なところがないと、楽しめないのかもしれない。
もちろん、自然との和は必要ではあるが、(植村さんも言及していましたが)
なぜか日本人というのは、自然に対しては、和を乱す傾向にあるようでもあり。。


国の面積が狭く、地震大国で山の多い日本では、団体行動、和が重んじられ、
国土の広いアメリカなどではより個人志向。
ひょっとすると国土のこういった違いが、国民性にも表れているのかもしれない。
言い過ぎではありますが、そんな想像すらかき立てます。