生物と無生物のあいだ

アメリカに住んでいた大学時代、本屋に行くのが好きでした。お気に入りだったのは、サイエンスや哲学のセクションで、近くのソファや床に座り込んでいろんな本をペラペラと眺めていました。周りを見ると、だいたい同じように学生っぽい人々が真剣なまなざしで分厚い本とにらめっこしていました。だいたい大きな本屋にはコーヒー屋がついていて、私のよくいっていたところでもスタバが入っていて、私もそこに気になった本を数冊持ち込み、コーヒーを飲みながら、ゆっくりと時間を過ごすのが好きでした。そんな本屋さん生活で出会ったのが、わくわくするような人工知能の話であったり、Richard Feynmanの生き方だったり、アインシュタインの探していたUnified theoryだったり、非常に自分の興味を広げてくれた空間でもありました。いまだに英語圏へ旅行や出張に行くと、毎回必ず本屋には訪れ、あのなんともいえない空気を吸って帰ってきます。

本書の中で、著者の福岡さんが語る、ロックフェラー大学の図書館にある神聖さ、なんとなく私の場合はアメリカの本屋さんを思い出してしまいました。学問の世界には、どこか神聖な空気があり、昔から私のあこがれでもありました。

一方、本書では学問の世界にある現実、ピアレビューなど、暗い側面も教えてくれ、逆に表には出てこなかった縁の下の力持ち(Unsung heroes)にも光を当てています。そういえば、昨年にカナダに遊びに行った際、某大学院でポスドクをやっている妻の友人にしばらくお世話になっていました。その際にも、彼から研究の世界にある暗い部分の話を聞き、非常にびっくりしたことを覚えています。本書を読み、彼が語った現代のダークな研究生活は、実は何十年前から存在したものなんだと、新たに気づかされました。

本書の終わり方も好きでした。本書を踏まえて、もう一度The age of spiritual machinesを読んでみたくなりました。そういえば、この本も、あの本屋でたまたま見つけた本でした。

さて、生命とは何なんでしょう。「跪く他ない」のか、それとも生命とは単なる機械なのか。こんなにわくわくする問い、他にありましたっけ?

5月18日追記:DNAの「発見者」は誰だったのかという問いは、GUIは誰のアイディアだったのか(Steve jobsゼロックス研究所)に似ている・・。世界は違えど、同じ人間の社会か。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)


The Age of Spiritual Machines: When Computers Exceed Human Intelligence

The Age of Spiritual Machines: When Computers Exceed Human Intelligence