適切な大きさの問題さえ生まれれば。(続)

メモ。

梅田

適切なサイズの問題をつぎつぎに生み出し、それの集まった総体を意図する方向に向かうようにデザインできる人こそが、これからのインターネットのリーダーというか、未来のリーダーシップなんじゃないかというような予感がしたんです。

岩田
どういう企画がうまくいくかというと、最初の計画では決まってなかったことを、「これ、ぼくがやっておきましょうか?」というような感じで誰かが処理してくれるとき。そういう人がたくさん現れるプロジェクトはだいたい、うまくいくんです。

梅田
「そこにクロスワードがあれば解くのと同じです」とまつもとさんも言ってましたけど、「問題を見つけると解決を考える」というのは、本能に根ざした行動なのかもしれないですね。

梅田
ぼくが若い人たちによく言うのは、ぬるま湯に慣れてしまうのはよくない、ということですね。やっぱり、いったんベンチャーと名乗って、さらにそこに集まってきた人がいる以上は、ステップアップしていってほしいんです。ある若い会社が、スモールビジネスを回して、潰れずに存続していくのは、じつはそんなに難しいことじゃないんですよ。それなりに文化的な貢献があって、局所的に「おもしろいな」と思われながら、なんとなく続いていく会社って、多いですから。でも、気づくと同じステージのままで10年、20年経っちゃった、というふうになる可能性だってある。それはベンチャーではないと思うんです。

(中略)

なにか自分のやりたいことがあって、その好きなことをやって過ごしているとそれを喜んでくれるユーザーの方が集まってくる。でも、ここで完結しているだけだと、そのつぎへ進むのに、足りないんですね。英語でいうと「コンフォートゾーン」という言葉があるんです。「Within the Comfort Zone」とかね、要するに、自分が非常に居心地のいい場所にいる。そこそこ利益が出て、20人くらいの社員に給料も払えて、ある種のユーザーからは喜ばれている。だけど‥‥ということですね。

梅田
ぼくもシリコンバレーに来て14年経ちましたけど、あそこの荒っぽい文化としては、全員をコンフォートゾーンじゃないところへ強制的に追い込むんですよ。そうすると突然変異が出るというメカニズムで。

糸井
そのとき、社員と話してるうちにね、「10年前の自分に感謝する」って思ったんです。つまり、10年前の自分が、先のことを考えずに「よいしょ!」ってやってくれたおかげでいまの自分たちがあるわけですよ。で、いま自分たちは忙しくやってるつもりでいるけど、あのときのあの「よいしょ!」に比べたら、ずいぶん快適な、ぬるま湯にいると思うんです。でも、やっぱり、いまから10年後の自分にも、同じことを言ってもらいたいじゃないですか。「2008年の自分が先のことを考えて用意しておいてくれたおかげでいま、こうしていられるんだよ」って、笑いながら仲間と語り合いたいなと思ったら、ちょうどいいスモールビジネスを回し続けているわけにはいかないなと。はたしてそれがストレッチするというはっきりした形になるかどうか知りませんけど、せめて、必死でなにかをテストするようなことが、一回、一回、必要なんだろうなと。